利用用途
急成長を続けるAI-OCRサービス「DX Suite」のサービス基盤を最新化し、顧客企業のビジネスを支える信頼性の向上と、より良いユーザー体験を創造するためにNew Relicを活用
New Relicの導入目的と成果
- 第2創業期におけるAIプラットフォーマーとしてのビジネス推進を支える環境整備
- コンテナおよびKubernetes に最適なオブザーバビリティ環境を実現
- マイクロサービス化されたモダンアプリケーションの可視化とトラブルシューティングの迅速化
- AI-OCRサービスのレスポンスタイムの定点観測を通じて予防保守を可能に
- テックチームとビジネスチーム、テックチーム内の共通言語としてNew Relicの観測データを活用
利用製品
- New Relic APM
- New Relic Synthetics
- New Relic Infrastructure
- New Relic Dashboard
- Errors Inbox
- Workloads
- Alerts&AI
AIテクノロジーの妥協なき追求により非常識を常識に変え続ける――AI insideが掲げるこのミッションは、AI分野で様々な挑戦に立ち向かう同社の強い決意を示したものだ。2017年に提供を開始したクラウド型AI-OCRサービス「DX Suite」は、手書きドキュメントを高精度にデジタル化する性能が評価され、およそ80業界・2,600社を超える企業に採用されるまでに成長している。2024年1月には生成AIを活用した新機能群をリリースし、AI-OCR後のデータ処理までワンストップで自動化する拡張性を示したことで 、AIツールからAIプラットフォームへの進化を鮮明に印象づけた。同社 Use Division Directorの三谷辰秋氏は次のように話す。
「アナログ情報を容易にデジタル化できる『DX Suite』は、デジタライゼーションの入口として業界 を問わず幅広いお客様から支持をいただいています。中でも、多様で膨大な帳票類を扱う金融機関様や自治体様などでは、手入力に依存していた業務を劇的に効率化できる効果が高く評価されました。私たちは、DX Suiteをお客様のデジタル変革の推進基盤としてご活用いただけるよう機能を拡充させるとともに、サービスとしての使いやすさと品質を日々磨き上げています」
AI insideの開発チームを統括する三谷氏は、主力サービスである「DX Suite」に加え、ユーザー企業独自のAIモデルを容易に開発・実装・運用できる統合基盤「AnyData」、AIエージェントが人に寄り添って業務を支援する「Heylix」などの革新的なAIプロダクトの開発もリードしている。
「いま、AI insideは第2の創業期とも言える新しい成長ステージに立っています。マルチモーダルなAIプロダクトの開発がスピード感をもって進められており、これまでの非常識が常識に変わっていく驚きを数多くお届けできると確信しています。『誰もが意識することなくAIの恩恵を受けられる豊かな社会』を実現することが、その先にある私たちの大きな目標です」(三谷氏)
「優れたユーザー体験」を提供し、「多くのユーザー」の獲得を通じて、「多くのデータを学習」することで、「高価値なAI」を開発・提供する――これが、AI insideの継続的な成長を可能にした好循環サイクルだ。三谷氏は次のように話す。
「第2創業期においてはビジネススケールの拡大をさらに追求していきます。2021年から進めてきたサービス基盤とアプリケーションのモダナイズもほぼ完了し、より多くのお客様に、より快適にDX Suiteをご活用いただく準備が整いました。マイクロサービスアーキテクチャを採用した新システムの能力を最大まで引き出すために、オブザーバビリティプラットフォームNew Relicを採用しています」
DX Suiteのサービス基盤とアプリケーションを最新化
DX Suiteの新しいサービス基盤は、Kubernetesをベースに整備されている。マイクロサービスアーキテクチャを全面的に採用し、モノリシックなアプリケーションはモダンなコンテナアプリに生まれ変わった。
「新システムは、第2創業期の成長を支えるスケーラビリティと信頼性を徹底的に追求しました。ところがPrometheusとGrafanaによる自前のモニタリング環境では、システムの安定運用に必要な情報が十分に得られず、不具合が発生した時の原因特定と解決に非常に苦労させられたのです。そこで私たちは、『迅速なトラブルシューティング』『アプリケーション稼働状況の可視化』『サービス品質の定点観測』『部門を越えた共通言語の策定』という要件を設定し、これらを高い水準で実現できる機能性を評価してNew Relicを採用しました」と三谷氏は振り返る。
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では39%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。Use Division Service Operation UnitでSRE業務を担う清川拓己氏は、New Relicを活用しすぐにその威力を実感したという。
「新しいサービス基盤はフロントエンド-BFF-バックエンドで構成されており、バックエンドのAPIを呼び出しながら、文書の前処理、読取、仕分けといった処理を連続的に実行していきます。それぞれのプロセスはさらに細かな機能サービスで構成されています。New Relicでは、DX Suiteのアプリケーションプロセス全体を可視化し、特定の箇所で発生したエラーが、その先で発生した問題の原因になっていることなどを即座に把握できます。ログと格闘しながら経験と勘で原因究明に取り組んでいた状況は一変し、トラブルシューティングは大幅に迅速化されました」
DX SuiteのAI-OCRサービスは、おおよそ次の手順で提供される。まずユーザーが元となる文書を複合機などでPDF・画像化し、クラウドにアップロードして読取個所やルールを指定する。これに基づいて「Intelligent OCR」が定型文書・非定型文書の前処理を実行。続いてAIエンジンである「Neural X」が高精度に読取を実行し、最後に「Elastic Sorter」が帳票の自動仕分けを行う。
「お客様がジョブを投入してからデジタルデータを入手するまでのレスポンスタイムは、サービス品質の重要な評価指標のひとつです。『今日は遅い気がする』といった漠然とした内容の連絡を受けたときでも、New Relicの観測値を見て即座に状況が把握できるようになりました」(清川氏)
遅延があったとき、その原因がインフラリソースの不足なのか、アプリケーションの並列度が最適でないのかといった検討も、New Relicのダッシュボードで同じ情報を見ながらSREとアプリケーション開発チームが協力して行えるようになったという。
「従来は、ジョブの件数やファイル数、データベースの負荷状況などの情報をもとに議論していたのですが、現在は『特定のユーザーリクエストやデータ形式で処理が遅くなるケースがあるので見直してほしい』というように、より具体的な検討が可能になっています」(清川氏)
エンジニアチーム全体で「優れたユーザー体験」を追求
AI insideのエンジニアは、一人ひとりが「優れたユーザー体験」の提供を意識しながら自身のタスクに向き合っている。そして、エンジニアチーム全員が同じ目標に向かっていく上で大きな役割を果たしているのが、New Relicによるユーザー体験の定量化だ。Use Division DX Suite UnitでWebアプリケーション開発を担当するChoi Yeon Seok 氏は、「New Relicを活用し、誰もが直感的かつ快適に使えることを常に意識しながらアプリケーション開発に取り組んでいる」と話しつつ次のように続けた。
「お客様が体感するレスポンスタイムをいかに短縮するかは、私たちの重要なテーマのひとつです。細かな機能サービス群で構成されるアプリケーションには、パフォーマンスを最適化できる余地が多くあります。逆に言えばボトルネックになる可能性も無数に存在し、機能アップデートの直後にその機能とは一見無関係に思える不具合が顕在化することも珍しくありません。New Relicでは、アプリケーションプロセス全体を可視化しつつ容易に原因を探り出すことができるので、どんな状況でも慌てずに対処できるようになりました」
清川氏は、「どれだけのページ数のファイルが投入されたかというアプリケーションのログと、データベースの負荷状況のようなインフラメトリクスを、New Relicダッシュボード上に時系列で比較できるようにしています。これにより、ビジネス要求とシステム負荷の相関が明瞭に把握できるようになりました。さらに、レスポンスを低下させる要因として、ファイル数やページ数だけでなく、ファイルの種類が大きく影響しているとも定量的に把握できました」と話す。
「優れたユーザー体験」を実現するために、アプリケーション開発エンジニア、SRE/インフラエンジニアという立場を超えた取り組みが進む。
「中長期でレスポンスタイムを見ていくと、徐々に処理時間が伸長しているような傾向を発見することがあります。そうしたケースでも、開発エンジニアがインフラを、SREがアプリケーションプロセスまでを視野に入れながら、原因の特定と解決のために協力できるようになりました。お客様から指摘を受けてから対処するのではなく、お客様が気づくような遅延を起こさないよう事前に手が打てるようになったことが、New Relic活用の大きな成果と言えるでしょう」(Choi氏)
DX Suiteが顧客企業・組織の業務プロセスに深く根づいているケースは少なくない。ビジネスクリティカルな要求に応え続けていくには、継続的なサービス品質向上への取り組みがますます重要になる。三谷氏は次のように話す。
「すでに社内ではSLI/SLOの制定と運用を始めており、遅延やエラーレートなどをビジネスサイドと共有しながら、サービス品質を向上させるためのフィードバックサイクルを回しています。このように、New Relicによって機会損失を減らし、価値向上につながる開発プロセスを確立できたのは大きな成果です。今後は、お客様に対して『DX Suiteのサービス品質』をリアルタイムで開示する仕組みを整えていく考えです」
日本発、世界をリードするAIプラットフォームへ
「世界トップクラスの識字率」がDX Suiteの圧倒的な優位性であることは間違いない。だが三谷氏は、「さらに重要なのは、お客様の業務にDX Suiteが具体的に貢献すること。それは識字率の高さだけでは達成できない」と言う。
「いかにお客様の業務課題にマッチした『サービス』を開発するか、いかに『AIモデル』を高性能に進化させるか、いかに『システム』の性能や信頼性を高めていくか――という3つのテーマで、DX Suiteのアップデートを進めています。文字情報のデジタル化をサービスの切り口のひとつとして重視しつつ、お客様のDX推進プロセス全体を支えるマルチモーダルAIプラットフォームへの進化がDX Suiteの次のステージです」(三谷氏)
日本では、生産年齢人口が減少する一方、データ入力のような業務は拡大する傾向が続いている。そうした背景もあり、DX Suiteのビジネスは2024年以降も 爆発的に成長するとAI insideでは予想している。
「私たちはGAFAMと戦って勝てるAIプロダクトを開発していると自負しており、実際にそうした評価を勝ち取りながら支持を拡大しています。DX Suiteは入力業務を自動化するツールとしてお客様の業務効率化に寄与していますが、ここがゴールではありません。お客様の活力と競争力に真に貢献できるマルチモーダルAIプラットフォームとはどのようなものか、今後のDX Suiteの進化にご注目ください」と三谷氏は力を込める。
AI insideは、我が国を代表する先鋭的なAI開発企業としてその動向が注目されている。「誰もが意識することなくAIの恩恵を受けられる豊かな社会」の実現は、遠い将来の夢ではない。AIプラットフォーマーへの変革を通じて、同社の「非常識を常識に変え続ける」ためのチャレンジはさらに加速していくだろう。三谷氏は次のように結んだ。
「AI-OCRサービスを提供する立場では、より良いユーザー体験を支えるシステムの安定性・信頼性の責務を担うことが求められました。AI insideがAIプラットフォーマーになることは、私たちが提供するAIサービスが多段階でお客様のビジネスを支えていく立場になることを意味します。サービス品質への要求は格段に厳しくなり、SLI/SLOを再定義する必要もあるでしょう。New Relicには、私たちの第2創業期を支える優れたオブザーバビリティ機能と、その活用のための技術支援を期待しています」