利用用途
ECプラットフォーム「ecforce」の機能強化とサービス品質向上にNew Relic Oneから得られたメトリクスを利用、フルスタックオブザーバビリティを更なるビジネス成長に活かす
New Relicの選定理由と成果
- 数百台規模のサーバーを運用する環境に最適なNew Relic Oneのライセンス体系
- 潜在的な問題点を正確に把握しつつ、緊急度・優先度の高いものから着実に対処可能に
- 従来のツールでは丸一日を要していたボトルネックの特定、問題解決を数分~1時間以内に短縮
- New Relic OneのメトリクスをAPIを介して顧客用の分析機能に展開
法人向けECカートシステム「ecforce」を開発・提供するSUPER STUDIOが、成長の第2ステージを迎えている。ecforceはD2C(Direct to Consumer)を指向する企業の支持を獲得し、導入数は500ショップに迫る勢いだ。取締役/CTOとして技術面からSaaS事業をリードする村上功記氏は次のように話す。
「SUPER STUDIOは、2021年に18億円の資金調達を行い、テック人材の積極採用、マーケティング施策の強化など、ビジネス成長を加速させるための様々な取り組みを進めています。より幅広いクライアント企業の要求にお応えするためにecforceの使いやすさを洗練させるとともに、クライアントのビジネスに具体的に貢献できる機能を拡充を進めています」
ECカートシステムとしてのecforceの強みは大きく2つある。ひとつは、購買者の手間を最小限にした入力フォームなど機会損失を防ぐ優れたインターフェース。もうひとつは、あらゆるデータ分析や広告媒体ごとのURLが発行できるなど、充実したデジタルマーケティング・販売促進が可能な標準機能群である。2つの特長を兼ね備えることで、ecforceを採用したECサイト/ショップは軒並み高いコンバージョン率を達成している。
「自社商品を直接お客様へお届けしたい、自社ECサイトをもっと売れる仕組みにリニューアルしたい、キャンペーンサイトを立ち上げてデジタルマーケティングを実践したいといったクライアントのご要望に、独自のノウハウを結集したコンサルティングサービス『ecforce teams』でご支援できることも私たちの強みです。ヒトとプラットフォームの両軸でクライアントのEC/D2Cビジネスを成功に導きます」(村上氏)
SUPER STUDIOには、食品・アパレル・コスメなどのブランドを自ら運営するD2C事業者としての顔もある。自社ブランドの運営を通じて獲得した知見を、ecforceやecforce teamsに反映しながら機能やサービスを磨き続けてきたことが、他のECカート企業と決定的に異なる点だ。
2021年初頭、SUPER STUDIOはNew Relic Oneを導入した。狙いは、さらに成長を加速させるecforceのサービス品質の向上、より良いユーザー体験の実現である。
ecforceのトラブルシューティングとパフォーマンス改善
スタートアップから年商が億単位に及ぶ大手企業までecforceのユーザー層は幅広い。500ショップ近い(※)ECサイト/ショップを運営するためにAWS上に構築されたサーバー環境は、占有型・共有型を含め数百台に及ぶ。サービス基盤の設計・構築・運用を担うのは、CTOである村上氏をはじめ約70名のエンジニアからなるエンジニアチームである。
※2021年9月末時点
「エンジニアチームは、大きく分けてソフトウェア開発、R&D、インフラ、品質保証、セキュリティの5つのユニットから構成されています。New Relic Oneは、各ユニットのリードエンジニアを中心に約20名で利用を開始しました。ユニットごとに目標を設定してNew Relic Oneの活用を推進するとともに、インシデント情報を全社で共有できる仕組みを整えました」と村上氏は話す。
New Relic Oneを検討するきっかけとなったのは、障害として顕在化していないヒヤリハットの検知だった。村上氏は次のように振り返る。
「インフラまわりの監視はOSSで十分に上手くいっていたのですが、アプリケーションプロセス上のボトルネックやコードの不具合を発見することはさすがに困難でした。2020年末頃、この領域でヒヤリハットがあったのです。幸いサービスへの影響は未然に防ぐことができたものの、再発の懸念を完全に払拭するには至りませんでした」
村上氏らはログとメトリクスをつき合わせながら調査を進めたが、原因を特定するまでに1週間を要したという。
「こうした状況を打開してくれたのがNew Relic Oneでした。テスト環境で問題を再現したところ、即座にコード上の不具合を特定することができたのです。改めてAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)の威力を実感するとともに、ecforceの成長を加速させていく上での統合的なモニタリング環境の必要性を痛感しました」
New Relic Oneは業界を代表するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は業界随一との評価を得ている。
村上氏は、ロサンゼルスに本社を置く企業で大規模なオンライン決済サービスの開発に携わった経験を持つ。このときにNew Relicのオブザーバビリティ(可観測性)を初めて体験したという。
New Relic Oneのメトリクスをecforceの分析機能に展開
ecforceのオブザーバビリティ(可観測性)環境を整備するにあたって、村上氏らはいくつかの製品を対象に機能・コスト・技術サポートの3軸で比較検討を進め、New Relic Oneの採用を決めた。
「まず機能評価で2製品に絞り、次にコストを比較したところ、サーバー台数の多い私たちの環境ではNew Relic Oneの優位性は圧倒的と言えるものでした。New Relic Oneはユーザー数と取り込んだデータ量でコストが決まるシンプルなライセンス体系で、すべての機能セットを無料で利用できるメリットも他の製品にはないものです」
ホスト単位で課金される製品は、サーバー台数の多いシステム、マイクロサービス化されたシステムでは想像以上にコストが膨らむ可能性があるので注意が必要だ。
「採用を決定的にしたのはNew Relic社による技術サポートの手厚さです。導入時の支援だけでなく、運用段階に入ってからも、定例ミーティングを通じて機能の実装や使用方法についてアドバイスを受けています。気軽に質問できることもありがたいですね」と村上氏は言う。
2021年6月にecforceは大幅なUI改修を実施した。リリースに向けて開発チームが全力で取り組む中、顧客企業向けのデータ分析機能の強化・実装が課題となっていた。期限が迫る中、開発チームのリソースが絶対的に不足していたのである。村上氏は次のように振り返る。
「New Relic社の技術者と会話する中で、New Relic OneのメトリクスをAPIを介して分析機能に活用できるのではないかと考えました。そのアイデアは新しいダッシュボードに実装され、クライアントは自社サイトのページビュー数、コンパ―ジョン数、コンバージョン率といったデータをほぼリアルタイムで参照できるようになっています。New Relic Oneを活用することで、機能実装のためのスケジュール面、コスト面でもメリットがありました」
New Relic Oneは、ecforce環境全体にオブザーバビリティ(可観測性)をもたらすとともに、ecforceが提供する顧客向けサービスにも新しい価値を提供することになった。
新機能リリース前後のコンバージョン率を評価
New Relic Oneによるオブザーバビリティ(可観測性)環境は、エンジニアチームのリードエンジニアを中心にそれぞれの領域で活用が進められている。その成果は経営層・ビジネス部門と共有され、ecforceの機能改善・サービス品質向上への取り組みに活かされる。
「監視画面もオペレーションもバラバラだった既存ツールを段階的に廃止して、New Relic Oneへの統合を進めています。運用効率化とコスト削減の効果を評価しながら、経営層とビジネス部門を含めてNew Relic Oneのメトリクスを存分に活用できる仕組みも整備する考えです」
従来の環境で丸一日を要していた問題解決を数分~1時間以内に短縮するなど、New Relic Oneはオブザーバビリティツールとしての実力をすでに発揮しているが、村上氏はさらなる活用も見据えている。
「ecforceの機能アップデートは業界トップクラスの質と量を誇ります。New Relic Oneを使えば、新機能のリリース前後でコンバージョン率が変わったか、コンパ―ジョンにどれだけ寄与したかを計測しながら機能を磨き上げていくことができるはずです」
さらに、クライアントの成功を支援するカスタマーサクセス部門では、New Relic Oneのメトリクスを活用し、コンバージョン率が際立って高いショップの成功モデルを定量化して、コンサルティングに役立てる取り組みを始めている。
「エンジニアチームの改善チームでは、New Relic Oneを活用してecforceでのクライアントの使用体験を評価しながら、レスポンスが悪い、クエリが遅いといったボトルネックを細かく洗い出し、原因の特定を進めてリスト化しています。新たにリリースされた機能を含め、潜在的な問題点を正確に把握しつつ、緊急度・優先度の高いものから着実に手を打っていくことが可能になったのです。ecforceの効果的な機能開発とより良い顧客体験の追求の両方に、New Relic Oneを戦略的に活用していきます」
SUPER STUDIO の成長を支えるテック人材
SUPER STUDIOは自社の成長戦略を加速させる具体策を次々と打ち出しているが、ecforceにおける革新的な機能の開発は大きな原動力のひとつだ。
「ecforce上で扱う様々なデータを活用した新しいプロダクトの開発に着手しています。このプロダクトは、お客様のデジタルマーケティング・販売促進の手法を大きく進化させるものと確信していますので、ご期待ください」と村上氏は力を込める。
新たなテック人材の登用もSUPER STUDIOとecforceの進化・成長に欠かせない。ビジネス要求を理解し、仕様を検討し、機能を実装するまで、SUPER STUDIOのエンジニアは幅広い業務を担う。New Relic Oneのメトリクスを含むデータ活用のスキルも重要だ。村上氏は、期待するエンジニア像を示しながら次のように締めくくった。
「EC業界は特性上、購入者やメーカー、製造会社、広告代理店等々数多くのステークホルダーが存在しており、各方面からシステムやサービスに様々な要求が上がってきます。またクライアントのビジネス環境が激しく変化する中、我々自身も競争力の高いビジネスモデルとそれを支えるシステムを常に追求していかねばなりません。膨大な要求の中から本質的に重要なものを見極めながら、誠実に対応していく姿勢は、エンジニアをはじめSUPER STUDIOの社員全員に求められるものです。ecforceをはじめ、より良いプロダクトの開発を通じてクライアント企業や購買者に喜んでもらえること、本質的に良いものを作ることを楽しめるエンジニアと一緒に仕事をしていきたいと思っています」