New Relic が広げたオブザーバビリティの世界観
社内外への普及促進で、ビジネス成果を最大化
福田 圭(ふくだ・けい)氏
株式会社サーバーワークス
マネージドサービス部
■AWS運用監視の新たな可能性に出会う
― いつごろ、どのようなきっかけでオブザーバビリティと出会われたのでしょうか。
オブザーバビリティを知ったのは、サーバーワークスに入社してからです。入社後、当時社内で使っていた監視ツールに触れたのですが、仕様に疑問を感じることも多くありました。そんなとき、社内でAWSのMSPサービスをさらに高度化し、お客様の満足度を向上する『次世代型MSP』を実現するための準備が進んでいることを知りました。
具体的には、従来から提供していたインフラの運用・監視を中心とするサービスだけでなく、インフラ上で稼働するアプリケーションをはじめ、アプリケーションを使うユーザー環境、利用が活発化しているコンテナ環境、サーバーレス環境などの状態をトータルに可視化。全体の状況から障害を引き起こす危険性がある要素をいち早く捉え、予防的に対処するというもの。これがオブザーバビリティの考え方であり、その実現ツールとしてNew Relicの導入を検討していると聞いたとき、従来の監視ツールで感じた課題が解決できるような、新しい可能性と出会えるかもしれないと思ったのです。
そこで「New Relicの導入検証をやらせてください!」と手を挙げ、実際に取り組んでみるとハマり込み、いまの私がある、というわけです。
■監視設定に必要な時間が半分から1/4に
― 注目されたNew Relicのポイントについて教えてください。
まず感動したのは、設定の自動化機能です。従来のツールでは、手動で相当な手間をかけて監視設定を作り込む必要がありました。それがNew Relicでは、NerdGraphを使うことで、複数の情報取得から監視設定まで自動で一気に作成できるのです。手動で設定していたときと比べ、業務の効率化は明白で、必要な時間は概ね半分、中には1/4まで短縮できたものもありました。設定後にあらゆるデータが観測できるようになった時には、「これがオブザーバビリティか!」と、本当に感動しましたね。この体験を通じてNew Relicの可能性を感じ、各種の機能がしっかり活用できるように、いろいろなことを試しました。
情報取得や監視設定の自動化による副次的な効果として、必要な他の業務に十分な時間をかけて取り組むことができます。さらに、手動で起こりがちな設定ミスがなくなるのも、大きなメリット。こうした効果により、運用コストも削減できます。こうして私が実感したことを、社内のメンバーにもお客様にも、すぐに体験してほしいと思いました。
■New Relicの浸透とオブザーバビリティの認知向上を推進
― その想いを踏まえて、どのような取り組みを進められているのでしょうか。
New Relicの検証に携わって以来、MSPで使用する監視ツールを従来製品からNew Relicへ移行して、活用するための取り組みを進めています。最初に実施したのは、やはり監視設定を自動化することで、業務を効率化して運用コストを削減する仕組みを構築しました。設定の自動化を浸透させることで、メンバーからも「自動化で作業が楽になった」という声を、かなり多く耳にしましたね。その後もNew Relicのさまざまな機能を検証しては、社内に通知して活用を浸透させていくことに取り組んでいます。
また、お客様に対して、オブザーバビリティの認知度を上げることにも取り組んでいます。いままでの監視は、システムに起きた不具合の原因を特定することに注力していた印象があります。ところが近年のシステムは、マイクロサービスの採用が進み、コンテナをAPIで疎結合することが多いため、システム全体の把握が難しくなっています。その一方で、システムを利用するユーザー数はどんどん増えています。こうした状況下では、従来の監視方法で不具合が発生した箇所を特定して原因を解明することは難しいと感じています。
では、どうするか。その解答がオブザーバビリティです。従来の監視ではメトリクスやログのみを見ていましたが、オブザーバビリティはトレース情報なども見れることで、サービスのコンポーネント間のフローが可視化できるため、簡単にシステム全体が監視でき、不具合の発生を抑えてユーザー全員が満足するシステムを維持することが可能になります。こういったメリット、魅力をお客様にわかりやすく、うまく伝えて使ってもらえるようにしたいと考えています。
■システムの信頼性、効率性、最適化を実現
― 今後の展望を教えていただけますか。
現在、お客様へのNew Relic提供とMSPの導入・活用支援サービスを通じて、オブザーバビリティの普及に努めています。この取り組みをスムーズに進めるため、社内ではNew Relic認定エンジニアを早期に育成する「オブザーバビリティエンジニア育成プログラム」を開始しました。この実施に向けた、必要な体制づくりも私が担当しています。
お客様に対する、オブザーバビリティの魅力を伝える取り組みも、ますます強化していきます。私自身、一番のポイントであり魅力だと考えているのは、アプリケーションを含めたシステム全体の情報を収集して可視化することにより、部門や役割を超えた情報共有や連携につながり、サービス品質の向上が簡単に行えるということです。New Relicを導入してダッシュボードを作成すると、開発者・運用者・経営層など、必要なメンバーで情報を共有する環境がすぐに構築でき、サービス改善のポイントを把握して追加開発が進めやすくなります。また、障害対応に関しても、現状では障害が発生するとログを見ることが多いと思いますが、ログ監視には職人芸の一面があります。それがオブザーバビリティを導入すれば、誰もがシステムの状況を把握できるのでログを見なくても障害対応をスムーズに実施できる機会も増えていくかと思います。こうしたオブザーバビリティの力でシステムの信頼性、効率性、最適化が実現でき、社内連携によるサービス向上が実現できることを、お客様に伝えていきたいと考えています。
■オブザーバビリティがビジネス成果を最大に
― オブザーバビリティがお客様にもたらす良い影響は、他にもあるでしょうか。
オブザーバビリティは従来の監視とは違い、「ユーザー体験」まで観測できることがやはり重要かと思っています。そもそも当社のお客様がMSP事業を利用する目的は、AWS上にあるシステムのユーザー体験を良好に保つことです。お客様に対して、既存のシステムにオブザーバビリティを導入すると、システムの可視化が可能になり、障害の原因になる要素を事前に捉えることで、良好なユーザー体験が維持できることを、わかりやすく正確に伝えていきたいと思っています。
また、当社では、「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンを掲げています。オブザーバビリティを導入することで、AWS環境全体が見やすくなって働きやすくなり、付加価値を高めるサービスの追加開発も実現しやすくなります。このように、オブザーバビリティの導入でさまざまなニーズに合わせたソリューションが設計・実装でき、ユーザーの体験も、開発者の生産性も向上し、ビジネス成果も最大化できることを、お客様に伝えていきたいですね。
■体験者から啓蒙者へ オブザーバビリティの力を解放
― 最後に、読んでいただいた方へのメッセージをお願いします。
オブザーバビリティは気になっているけど、詳しい内容や実際の導入効果がわからない、という方もいらっしゃると思います。そういった方に対して、オブザーバビリティを導入すると、データの可視化や共有がしやすくなる、システム運用の負荷が軽減できる、システム全体が把握できる、システム改善箇所が把握できてサービス改善や追加開発が進めやすくなる、といった利点をお伝えして浸透させていきたいというのが、私の想いです。
オブザーバビリティの利点は理解できたので、より具体的な内容を知りたい、実際に導入してみたい、ということであれば、ぜひ、ご連絡ください。詳しいお話を伺ったうえで、しっかりと、ご希望にお応えします。