次世代の運用監視には攻めと守りが必要不可欠
領域にとらわれないエンジニアがたどり着いた、好いとこ取りをかなえる新概念
寺澤 一平(てらさわ・いっぺい)氏
日鉄ソリューションズ株式会社
ITサービス&エンジニアリング事業本部 クラウドプラットフォーム事業部
エンジニアリング第一部 上級専門職
多方面における実務経験と技術力を評価され、2020年頃より、当時立ち上げたばかりのパブリッククラウド関連技術を専門に取り扱う現部署に抜擢。現在はAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(Azure)、Oracle Cloud Infrastructure(Oracle Cloud)等のパブリッククラウドサービスを利用したシステムの提案・設計・導入を推進。
■「攻めと守りの監視」を両立するオブザーバビリティに期待
― いつごろ、どのようなきっかけでオブザーバビリティと出会われたのでしょうか。
2022年末から2023年初頭にかけて、New Relic をはじめとするオブザーバビリティを実現するクラウドツールの検証を開始したのがきっかけです。
私が所属する事業部は、名前の通り、お客様のクラウドサービス活用を支援することが主なミッションです。サービス水準の向上のために、クラウド技術に関する国内外のトレンドを調査し、先進的なツールの探索にも力を入れています。オブザーバビリティツールの検証を開始した当初までは、Amazon CloudWatchやAzure Monitorなどの既存のオンプレミス向けの監視ツールやプラットフォーム標準の監視システムを活用していましたが、お客様からのシステム要望が高度化してくるようになり、サービスやアプリケーションの監視に関する機能が不足しているなと、歯がゆさを感じる機会が増えてきました。
従来型のインフラ基盤運用では、CPUやメモリの使用率、システムログ上のエラーなどから、ハードウェアやOSレイヤの問題点を迅速に検出し、対処していく必要がありましたが、クラウド技術の登場以降はプラットフォームを提供するベンダー側にそうしたレイヤの運用を任せるため、サービスそのもののパフォーマンスを重要視するように考え方が変わってきています。IT基盤そのものに関しても、顧客の非機能要件を満たすインフラを提供するだけでなく、より顧客が求める最終的な機能を提供するSRE(Site Reliability Engineering)や、アプリケーション開発とのスムーズな連携に目を向けて考える必要性があると思っています。
こうした情報システム部門が実施してきた従来型のインフラ基盤運用を守りの領域と定義づけるなら、顧客体験の品質向上を意識したクラウドを中核とするサービス監視や、その実現を支えるAPMは攻めの領域です。デジタルサービスの運用品質がビジネス成果に直結するこれからの時代には、そのどちらも両立させることが必要不可欠だと、私自身強く認識しているため、既存の監視ツールの機能を補填できる製品として、多様な機能を持ち合わせるNew Relicに興味を持ちました。
■New Relicとともに、お客様の考え方をアップデートしたい
― これまでどのような課題を持つお客様にオブザーバビリティをご提案されてきたのでしょうか。
2024年2月27日にニュースリリースとして発表した通り、当社はNew Relicの取り扱いを開始したばかりのため、現時点ではお客様への導入に向けたご提案が主な活動になっています。
提案活動を進める中でよく感じるのは、やはりお客様のあいだでオブザーバビリティの理解がまだまだ不足しているということです。「2025年の崖」が迫る中、システム環境のモダナイゼーションに取り組まれるお客様が多くいらっしゃいますが、パブリッククラウドにシフトした環境下でも従来の守りの基盤監視のみを継続していてよいのか、漠然と悩まれている場合が多いように思います。そうした不安感をお持ちのお客様に対して、従来領域をカバーしつつ、APMを重視する次世代のサービス監視がどのような効果を生み出すのかという視点で、オブザーバビリティの重要性を説明してまわっています。「運用監視はシステムを安定稼働させるもの=守りのIT」という考え方を、お客様にアップデートしていただき、オブザーバビリティを取り入れシステムを安定稼働させること自体が、より良い顧客体験をもたらし、めぐりめぐってビジネス成長を牽引する「攻めのIT」の実現につながるのだという前向きな認識を普及させていきたいと思っています。そのためにも、お客様への提案だけでなく、オブザーバビリティを活用したより訴求力のあるソリューションの開発検討にも率先して取り組んでいきたいと思っています。
■あるべき像を浮き彫りにするための事例整備が求められる
― お客様が抱える「漠然とした悩み」について、もう少し具体的に教えてください。
お客様ご自身が、サービス監視やアプリケーション監視を実施するうえで、どのような監視項目を検討するべきなのか見当がついていないということだと思います。新しい運用監視の実現に向けて、そもそものあるべき像が描けていないために、既存の監視ツールやクラウドプラットフォームの監視機能だけでは手の届かない領域に対して漠然とした課題感を抱いているものの、どのようなソリューションを活用し、どういった情報を見ればシステム全体のパフォーマンス向上やコスト最適化につながるのかが、未だ要件として整理できていないように思えます。
こうした現状に対して、私たちSIerが、お客様の課題感に応じて推奨できるオブザーバビリティの活用事例や運用事例を整理していくことが、これからのマルチクラウドを取り扱うIT基盤ビジネス発展の鍵になると考えています。
■領域にとらわれないエンジニアとして、時代のニーズに即したサービス開発を
― これまでのご経験や想いを踏まえて、今後どのような展望をお持ちでしょうか。
クラウド技術の発展に伴い、従来の基盤システムの設計・構築・運用から様々な考え方を転換させていかなければならない時代になったと思っています。オブザーバビリティの注目が高まりつつあるのも、時代の変化に伴い従来型の監視から、提供しているサービスそのもののパフォーマンスといったシステム全体の可観測性を重要視する変化が起きている証拠だと感じています。
こうした時代の変化に迅速に適応するためにも、オブザーバビリティを取り入れた攻めのITを実現するインフラソリューションの提供を目指して、多様な業界のお客様向けの案件に携わり、今後も自身の強みである「領域にとらわれない知見」を蓄積していきたいと思っています。そのために、まずは当社の付加価値を加えたオブザーバビリティの実現に向けて、New Relicをどのように活用できるのか、検討を率先して進めていきたいと思いますし、そうした取り組みを通じて、クラウド技術者としての幅を更に広げていきたいと考えています。オンプレミスやクラウドといった領域を問わない広いIT基盤の領域で活躍できるITアーキテクトとして、お客様に信頼されるエンジニアへ成長できるよう、今後のキャリアを見据え、精力的に活動していきます。
■『Make IT Sustainable』が実現する、モダンでビジネスに活きる基盤のご提供へ
― 最後に、読んでいただいた方へのメッセージをお願いします。
私が所属する事業部は、ITサービス&エンジニアリング事業本部に属しているのですが、その事業本部のミッションステートメントに『Make IT Sustainable』という言葉が掲げられています。「当社のITがお客様の業務環境の改善に貢献し、ビジネスの中核としてサステナブルな事業成長を導く存在になるように」という意味があります。その想いを受けて、クラウドプラットフォーム事業部では、absonne(アブソンヌ) をはじめとするプライベートクラウドからAWS、Azure、Google Cloud、Oracle Cloudといったパブリッククラウドのインフラ構築・運用など幅広い領域のエンジニアリングをご支援しています。加えて、2023年からはクラウドネイティブアーキテクチャを積極的に利用したクラウドのフレームワーク検討や生成AIを利用したシステムの検討等の研究を進めています。幅広いソリューションの提供とNew Relic をはじめとするオブザーバビリティの提供は、今後より一層需要を増していくと考えておりますので、自社のシステム基盤をよりモダンに進化させ、ビジネスに活きる運用監視をお探しの方はぜひお声がけをいただければと思います。
・absonne\アブソンヌは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
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