アスクル|高速な仮説検証能力を獲得し「B2B最強ECサイト」の実現へ

Askul

利用用途

事業所向け通販サービス「ASKUL」「SOLOEL ARENA」を統合して新アスクルWebサイトを構築する社内のサイト統合プロジェクト「Trylion(トライオン)」における開発生産性の向上、システム運用の高度化と安定稼働にNew Relicを活用

New Relicの選定理由と成果

  • 「高速な仮説検証能力」を獲得するためにSREの考え方とオブザーバビリティを活用
  • 不具合や負荷課題があった際の、調査、修正及び再テストまでの期間が約80%短縮
  • エンジニア・非エンジニアを問わず、全社でECサイトのサービス品質向上に取り組むための環境を整備
  • ビジネス評価指標である「品質KPI」に、「ECサイトのサービス品質(SLI/SLO)」を組み込み
  • CI/CDを実践する新アスクルWebサイト開発フェーズの生産性を向上
  • コンテナ/マイクロサービス環境の監視を強化し、運用のバージョンアップとシステム安定化を達成

利用製品

・New Relic APM
・New Relic Infrastructure
・New Relic Logs
・New Relic Synthetics
・New Relic Dashboard
・AWS Integration

B2B最強ECサイトの実現へ――アスクルが、国内最大級の事業所向け通販サービス「ASKUL」と「SOLOEL ARENA」の統合プロジェクトを急ピッチで進めている。モダンなテクノロジーを全面的に採用した新アスクルWebサイトは、アスクルの成長戦略を支える次世代プラットフォームとして位置づけられるものだ。同社 テクノロジー本部 プロダクトマネジメント 統括部長の内山陽介氏は次のように話す。

「中小事業所様向けに提供してきたASKULと中堅大企業様向けのSOLOEL ARENAを統合することで、品揃え、機能、サービスを拡充させお客様価値を最大化していきます。『B2B最強ECサイト』の実現という目標を達成するためには、ビッグデータを活用したお客様への適切な提案活動、パーソナライズされた購入体験などを一層強化していく必要があると考えています。自社でEC物流を持つ強みを活かし、新アスクルWebサイトをフルに活用して成長戦略を加速させていきます」

Zホールディングスとのグループシナジーを発揮できることも、アスクルの大きな強みだ。2015年にヤフー株式会社から出向した内山氏は、2018年にアスクルへ入社。現在は、アスクルのプロダクトを支えるシステムとエンジニアチームのモダン化、全社レベルのテクノロジー活用・デジタル変革の推進を担っている。

「EC事業は堅調に推移しているものの、ライバル企業の参入や物流の人材不足など不確実な要素も増えています。こうした環境下で成長し続けていくには、アスクル自身が強力なテックカンパニーに生まれ変わる必要があると考えています。そして、『高速な仮説検証能力』を備えていることが、優れたテックカンパニーの条件であるというのが私の持論です」(内山氏)

Askul内山様

テクノロジー本部 プロダクトマネジメント 統括部長 内山陽介氏

新しい顧客サービスと、それを支えるプロダクトや機能を次々と送り出しながら高速に仮説検証を繰り返し、持続的に成功率を高めていくことのできる組織、というのが内山氏の描くテックカンパニーの理想だ。新アスクルWebサイトにも、この考え方がしっかりと反映されている。

「クラウドネイティブテクノロジーを全面的に採用し、CI/CD環境を整備して新機能のリリースサイクルや機能改修のスピードを高めています。また、SRE(Site Reliability Engineering)の考え方を、エンジニア・非エンジニアを問わず全社レベルで浸透させることを目指して、オブザーバビリティプラットフォームNew Relicの活用を進めています」(内山氏)

アスクルには、創業以来大切にしてきた『お客様のために進化する』というDNAがある。内山氏の言う「SREの考え方」とは、顧客とともに進化するアスクルを体現するために、エンジニアと非エンジニアが協力して、ECサイトのサービス品質を継続的に向上させるものだ。

マイクロサービス化された新アスクルWebサイトの可視化

クリーンアーキテクチャーの考え方をベースに、マイクロサービス化された新アスクルWebサイトのアプリケーションはAmazon ECS上で稼働している。

「New Relicを採用した最初の狙いは、CI/CDを実践するモダンなアプリケーション開発に『高速な仮説検証能力』を組み込んで、開発段階から品質を作り込めるようにすることでした。マイクロサービス化によって、開発者がアプリケーション全体を見通すことが難しくなるため、できるだけ早期の段階で不具合やボトルネックを解消しようと考えたのです」(内山氏)

結合テストで初めて性能問題が明らかになった、本番稼働が始まってから不具合が顕在化した――といった問題を回避できれば、開発生産性は向上し、プロジェクト管理の確実性も高まる。

「運用フェーズでは、多数の機能コンポーネントが連携するマイクロサービス環境で、New Relicの『分散トレーシング』を適用できることに期待がありました。複雑なサービス連携の全体像を誰の目にもわかるよう可視化し、トラブルシューティングを迅速化したいと考えました」(内山氏)

New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では39%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化できる。

「APM(Application Performance Monitoring)をはじめとするオブザーバビリティ機能を、私たちのプロダクトに容易に導入できることを重視して選定を行いました。New Relicは新アスクルWebサイトで使用しているKotlinに対応しており、導入のしやすさ、機能性と活用のしやすさ、コストの面で明らかに優位でした。New Relicの技術チーム・セールスチームから適切なアドバイスを受けられたことも大きかったですね」と内山氏は話す。

顧客体験を意識してエンジニアと非エンジニアが協力

新アスクルWebサイトの開発プロジェクトにおいて、システム/サービス基盤の整備とNew Relicの活用をリードしているのは、テクノロジー本部 プロダクトマネジメント クラウドストラクチャーのエンジニアたちだ。マネージャーを務める小森学氏は次のように話す。

「全社のクラウド活用の推進を担うCCoE(Cloud Center of Excellence)として、アプリケーション開発チームをはじめ、幅広い部門にSREの考え方やNew Relicダッシュボードの活用法を啓蒙し、それぞれの業務に根づかせる活動を行っています。ECサイトでのお客様体験やサービス品質は、部門や業務を問わず全社員が意識すべき指標である、という考え方が私たちの立脚点です」

Askul小森様

テクノロジー本部 プロダクトマネジメント クラウドストラクチャー マネージャー 小森学氏

「お客様のために進化する」というDNAを体現するためには、エンジニアと非エンジニア(経営層やビジネス部門)の協力が不可欠だが、New Relicの観測データが両者を結ぶ「共通指標」「共通言語」としての役割を果たす。

「新アスクルWebサイトのサービス品質に対してSLI/SLOの制定を進めてきたのですが、ようやくNew Relic SLM上での運用まで漕ぎつけました。アスクルでは全社で『品質KPI』への取り組みを進めており、商品の破損率、誤出荷率、納期遅延率などを評価しながら改善活動に役立てています。ここに、『ECサイトの可用性と応答速度』の項目を加えることができたのは大きな成果です」(小森氏)

開発者が、顧客目線でプロダクトの品質を把握できるようになったことも重要だ。同チームの三輪亮介氏は次のように話す。

「New Relicのダッシュボードでは、ECサイト全体の可用性や応答速度を俯瞰的に把握できるだけでなく、特定の機能やAPI単位にまで掘り下げて、より詳細なレスポンスタイム、スループット、エラー率などを確認できます。開発者が自分の担当した機能の品質を定量的に確認でき、他の機能のスコアと比較しながら自身の品質レベルを知ることもできます。その結果、開発者同士で品質を高め合うような効果も生まれてきていると思います」

Askul三輪様

テクノロジー本部 プロダクトマネジメント クラウドストラクチャー 三輪亮介氏

新アスクルWebサイトを効率的に監視・運用していくための環境も着実に整えられている。同チームの福田裕崇氏は次のように話す。

「Terraformを利用してNew Relicのアラート設定をコードで管理しています。新アスクルWebサイトの開発工程では多くの機能群にアラートを設定したのですが、コードを複製することで効率的に作業を進めることができました。また、サイトで遅延などが検知されたとき、開発チームとインフラチームがNew Relicダッシュボードで同じ観測データを見ながら、原因の特定と解決に向けて協力できるようになっています。エンジニアチーム間にあった壁のようなものはすっかり取り払われました」

Askul福田様

テクノロジー本部 プロダクトマネジメント クラウドストラクチャー 福田裕崇氏

「B2B最強ECサイトの実現」に挑む

アスクルは2023年3月に30周年を迎えた。2023年5月期は売上高・利益ともに過去最高を更新したが、現状に満足することなく、更なる成長に向けて「オフィス通販からのトランスフォーメーション」を推進している。

「変革の向かう先は、強力なテックカンパニーとしてのアスクルです。『圧倒的な仮説検証速度を手に入れる』という第1の目標を見据えて、私たちは着実に前進しています。不具合や負荷課題があった際の、調査、修正及び再テストまでの期間が約80%短縮されました。サービスを高速で進化させる体制をより強固なものとし、お客様を驚かせるような圧倒的なサービスを実現することが、続く第2・第3の目標です」と内山氏は力を込める。

新アスクルWebサイトをフルに活用してビジネスを成長させるために、CI/CDを実践する開発チームと、顧客視点を持ったインフラチームが力を合わせている。3者をより強く結びつけて「高速な仮説検証サイクル」を可能にしているのは、SREという考え方とNew Relicである。

「New Relicを使いこなす過程で、開発チームから言われた通りにインフラを用意するのではなく、こちらから適切な構成やサイジングをアドバイスできるようになってきました。New Relicでは、サービス遅延などの原因がインフラ側にあるのか、アプリケーションコードにあるのか即座に特定できますので、問題解決の初動が早くなったことも大きいですね」と三輪氏は話す。

内山氏は、「開発生産性は確実に向上し、サービスを安定的に提供できる能力も高まっている」と話しつつ次のように結んだ。

「New Relicによって運用が格段にアップグレードされたことで、問題検知のレベルも大きく改善しています。見えなかったリスクが見えるようになり、攻めの姿勢を貫けるようになりました。問題を恐れずに新しいアプリケーション開発にチャレンジできる環境は、アスクルの新しい成長の原動力となるに違いありません。これまでの常識を覆すようなサービスを次々と提供し、デジタルディスラプターとして『お客様のために進化する』アスクルを目指します。New Relicの技術チームには、これからも適切なアドバイスと技術サポートを期待しています」