利用用途
「安全、安定、安心なデータセンターサービス/クラウドサービスを支える共通基盤システム」の強化、アプリケーション開発チームとインフラチームが認識を共有できる指標の獲得にNew Relicを活用
New Relicの選定理由と成果
- 複雑なハイブリッドクラウド環境におけるトラブルシューティングの迅速化
- ユーザー視点から遅延やエラーなどを把握しプロアクティブな改善が可能に
- 共通基盤システム全体を「ひとつの地図」で可視化し、開発チームとインフラチームの共通認識を醸成
- オブザーバビリティの活用を通じてチーム全員が「多機能エンジニア」を指向
利用機能
- New Relic APM
- New Relic Browser
- New Relic Synthetics
- New Relic Infrastructure
- New Relic Logs
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)が、2022年4月に創立50周年を迎えた。その進化と成長を支える原動力は、スローガンChallenging Tomorrow's Changesとともに受け継がれてきた「挑戦する文化」である。そして、優れたテクノロジーを世界中から発掘し、顧客の課題解決とビジネスの成功に貢献しながら培ってきた「フルスタックITとグローバルパートナーシップ」はCTCの大きな強みとなっている。エントラステッドクラウド技術事業部 サービス品質管理部 基盤開発課 課長の横堀雅人氏は次のように話す。
「クラウドネイティブ技術の急速な進展が、CTCのフルスタックITをさらに拡充させており、お客様へ提供するソリューションとサービスの強化につながっています。この大きな変化は、お客様への価値提供の基盤であるCTCのデータセンターサービスとクラウドサービス、これらの開発・運用を担うエンジニアチームに更なる進化を強く促しています」
CTCでは、利便性に優れた都市型データセンター4拠点(横浜、神戸、目白坂、渋谷)を整備し、CUVIC(キュービック)ブランドのハイブリッド/マルチクラウドサービスやコロケーションサービスなどを幅広いラインアップで提供している。パブリッククラウドとの高速な接続サービス、高品質なマネージドサービス、柔軟なカスタマイズ性が売りだ。
「私たちは、『安全、安定、安心』なデータセンター/クラウドサービスを基盤に、お客様ごとに価値の高いサービスを作り込んでご提供します。中でも、ミッションクリティカルな要求に応えるハイブリッドクラウド環境を実現できることが、様々な選択肢がある中で、お客様にCTCをお選びいただける大きな理由となっています」(横堀氏)
横堀氏が率いる基盤開発課は、CTCのデータセンター/クラウドサービスを適切に運用するための「共通基盤システム」の開発・運用を担う。顧客向けポータルをはじめ、サービスデスクやファシリティ管理など多様なシステムで構成される本環境では、2019年よりNew Relicが活用されている。
「共通基盤システム」の開発・運用を新たなステージへ
CTCのデータセンター/クラウドサービスを支える「共通基盤システム」は、顧客向けとCTCエンジニア向けに大別される。前者はカスタマーポータルやデータセンター入館管理システム、後者はサービスデスク、サービス運用管理、ラックレイアウト管理、電流監視、従量明細管理、プロジェクト管理などの多様なシステムから構成される。各システム間でサービス情報や契約情報を連携させ、データセンター/クラウドサービスを支える業務フローが整備されている。
「お客様のハイブリッドクラウド環境に『安全、安定、安心』を提供し続ける――このミッションを担うために、基盤開発課では、新しいテクノロジーを採り入れながら常に自分たちの業務を見直してきました。2018年に決断したNew Relic導入もこの一環です。Javaアプリケーションのメモリリーク問題の解決に、APM(Application Performance Monitoring)を利用したことがNew Relic採用のきっかけでした」と横堀氏は振り返る。
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は業界随一との評価を得ている。「New Relic APMを使えば、インフラエンジニアでもアプリケーションコードの不具合を発見できる」というインパクトは大きかったという。
「クラウドネイティブ技術の進展とともに、サービスは常により良いものへと進化が求められ、システムは改善を繰り返すべきものに変わりました。ソフトウェアエンジニアリングを軸に、システムの継続的な改善を担うSRE(Site Reliability Engineering)の考え方でチームを変革し、共通基盤システムの開発・運用を新しいステージへ導くためにNew Relicを活用しようと考えました」(横堀氏)
横堀氏のチームでは、段階的にNew Relicの導入と既存ツールからの移行を進め、現在ではAPM、Browser、Synthetics、Infrastructure、Logsが活用されている。基盤開発課でインフラ領域を担当する今野向陽氏は次のように話す。
「New Relic APMによるJavaアプリケーションの監視、Syntheticsを活用したWebサービスのURL監視を行い、Infrastructureではシステムリソースやプロセスをモニタリングしています。これにより共通基盤システム全体が可視化され、何らかの問題が発生したときの原因特定から解決までのリードタイムは大幅に短縮されました。また、ログ分析ではスロークエリの発生を把握して深刻な問題が発生する前に手を打てるようになりました。さらに、Browserによるユーザー体験の観測にも着手したところです」
エンジニア全員が「ひとつの地図」を共有
基盤開発課では、共通基盤システムを構成するシステムごとにアプリケーション開発・運用チームを編成しており、インフラチームが横断的にサポートする体制を採っている。インフラ監視からログ分析まで、複数のツールを組み合わせて横串でモニタリング環境を整備してきたが、これらがNew Relicに移行され、一元化された形だ。
「共通基盤システムはAWSとオンプレミスが連携するハイブリッドクラウド環境ですが、New Relicによりシステム全体を一元的に把握でき、様々なメトリクスの収集・分析も可能になっています。複数のツールを使っていた時代は、問題発生時の原因特定を運用管理エンジニアの職人技に頼るしかありませんでしたが、New Relicなら誰にでも一目瞭然にできます。アプリケーション開発チームとインフラチームが共有できる『ひとつの地図』が手に入ったことも重要です」(横堀氏)
今野氏は「ひとつの地図」の有効性の一例として、「New Relicのダッシュボードへのリンクをチャットでチームに共有するだけで、誰がどう対処すべきか即座に判断できます。情報共有の確実性とアクションの迅速性は大幅に高まりました。情報伝達のロスがなくなった事により、問題の共有及び特定に数時間掛かっていたものが、即座に解決した例もあります。」と話す。
目の前の問題解決を迅速化するだけでなく、中期的な視点でシステムとサービスを改善していく共通指標としてもこの地図は有効だ。
「従来型の監視では、何らかの問題が検知されてから対応するのが基本でした。優れた分析力・表現力を備えたNew Relicにより、潜在的な問題点を洗い出せるようになったことは大きな前進です。『ひとつの地図』により、エンジニアにとって見えるものが変わったことで、問題が顕在化する前に改善に着手するようなプロアクティブな対応が可能になりました」(横堀氏)
チーム全員の意識が「作っているのはシステムではなくサービス」へと変容
New Relicの活用は、エンジニア全員の意識と行動を『SRE指向』に変えつつある。今野氏は、「顧客・エンドユーザーの視点でさらにサービスを磨いていきたい」と話しつつ、次のように続けた。
「New Relic Syntheticsによる外形監視は、何らかの問題が発生したときにお客様の体験を把握することに役立っています。これをもう一歩進めて、お客様が遅延なくサービスを利用できているか、お客様のどのような挙動がレスポンスに影響したのかをNew Relic Browserで把握しながら、Webページのパフォーマンス向上につなげていきたいと考えています」
横堀氏も、「フロントエンドのモニタリングには他のツールを使用してきたのですが、段階的にNew Relic Browserに置き換えていく考えです。『SRE』の視点から、New Relicのオブザーバビリティをフルスタックで利用できるメリットを評価しての判断です」と話す。
New Relicは、ユーザー数と取り込んだデータ量でコストが決まるシンプルなライセンス体系で、APM、Browser、Logs、Infrastructureをはじめとする豊富な機能を無制限で使用できる。
「ユーザーライセンスのメリットを活かして、コストを抑えながら共通基盤システムの開発・テスト・本番環境すべてにNew Relicを導入しています。サーバーやクライアント規模の制約がないため、構築した
システムには100パーセントNew Relicのエージェントを入れて、もれなく『地図』で見られるようにしています。今後のビジネス成長に伴うシステム拡張に際してコスト効果はさらに大きくなるはずです」(横堀氏)
共通基盤システムの開発・運用を担う横堀氏のチームの変革は着実に進んでいる。注目すべきは、「作っているのはシステムでなくサービスである」という意識の変化である。サービスが顧客価値そのものならば、その価値を高めるには顧客体験を知らなければならない。
「お客様の体験を知れば、解決すべき問題も改善すべきポイントも見える――という視点に気づかせてくれたのはNew Relicでした」と話す今野氏は、New Relicのユーザーコミュニティやトレーニングへの参加にも意欲を示す。最後に、横堀氏が次のように結んだ。
「お客様のシステムはハイブリッド環境が当たり前になり、エンジニアがカバーすべき技術領域は大きく拡大しています。オブザーバビリティという手法とNew Relicのような優れたツールを使いこなしながら、チームのエンジニア全員が多機能に進化し、お客様に提供できる価値を高めていくことが目標です。New Relicには、最先端のトレンドを先取りした機能拡張・進化を継続していただき、これからも私たちのミッションを支え続けてくれることを願っています」